rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第35章 the price of choice
シルバーの気持ちを知ってから、日はもうひと月も過ぎていた。
ホテルに行ったあの一件以来、不思議と胸のざわつきは感じなかったし、どころか、心なしか体調も良かったことが、耐えず名無しを驚かせている。
たとえば自身の携帯が鳴り響いても、強迫観念も、背筋が凍ることも皆無だった。
「………」
―――。
――。
『……勝って…る…、わ……!』
『だから言ったろ?今日くらいはもう試合のことは考えさせんな……ほらよ』
『……ん…』
『……部屋に戻るぜ…。あいつらより先に帰るから、おまえも支度しろよ』
『…っ……え…?』
『あの部屋とベッドにおさらばするのは惜しいけどな…ハ…ッ。送ってやるよ……それともオレの部屋に帰るか?』
『え……ッ』
浴室の排水溝に流れてゆく、澄んだシャワーの湯に紛れていたのは二人の体液だった。
露骨に目に映るのは当然シルバーのものだろう。
白く濁った、弛みの混ざったそれは名無しの内腿にも絡みついていた。
が、その時はもう既に、彼女がそれを望んでいた。
濡れ髪を撫で合い、抱き合って重ねた唇。
キスはいつまでも続けられた。
幾度となく交わって、漸く再び性欲が満たされたときには、時刻は午後をとっくに過ぎていた。