rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第35章 the price of choice
『そういや、忘れてねえよな?』
『、……なにを…?』
『~~……アレだよアレ。…また作るっつっただろうが』
『!あ……ああ、……』
時計なんて目もくれない。
シャワーを終えると、シルバーは名無しの背後に立ち、口約どおりドライヤーを彼女の髪にあてていた。
本濡れしていたわけではなかったゆえ、数分も温風をあてていればすぐに乾き、癖もとれるだろう。
とはいえその所作はシルバーがやりたかったもののようであり、相も変わらず見た目とは裏腹、彼は名無しの髪にとても丁寧に触れた。
名無しは、ホテルの部屋のドレッサーがわりとなっていた机に座り、黙ってシルバーの厚意を受ける。
やがて出かける準備も終えれば、二人そろってロビーまで降り、外へと食事に出かけた。
『そんなに気に入って…くれてたの…?』
『――食いてえんだよ…そろそろ。今度オレの部屋に来るときに持ってこい……わかったな?』
『っ……うん…』
シルバーは出先で携帯の電源を再び切っていたようで、ホテルの部屋に戻るまで、それを一度もみることはなかった。
まあ殆どの時間、服のポケットに両手を突っ込んでいた所為もあるだろう。
自分が前を、名無しを後ろに歩かせていたのは、名無しはちゃんと後ろをついてきていると、シルバーが信じていたからだった。