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rain of teardrop【黒バス/ジャバ】

第34章 wrong step on the stairs8



名無しはこの瞬間、シルバーに同じ言葉を紡がれたことで、煽られ続けたナッシュの言葉は事実だったのだと改まりつつ、キスも相まってとうとう身体の力が抜け落ちていた。

それを支えたのは他ならぬシルバーであり、彼は名無しが、自身と同じ言葉を口にする様子をキスのさなか窺っているようだった。


「ん……」


だとしても、名無しにはどうしても言えなかった。
もう殆ど認めていても、ナッシュが裏で高笑いするのは目に見えていたし、シルバーと真の意味で想いを通わせることは不安で不安でならなかった。

失うことを何よりも恐れていた名無しは、シルバーにとって都合の良い、一番目の女というポジションに甘んじているしかなかった。

そう思うと、惚れているなんて言葉は、案外と安っぽくも感じられた。


「……しない…」

「、……んー?」

「絶対…しない……誰にも…」

「……ああ…。ほら髪流すぜ?それともマジでするか?名無し……オレは抱きてえけどな…」

「ッ……、する…――して…?」


どうしても言えなかった……。

好きだとか、愛しているだとか。


本当の恋人だけに言えるような、恋慕を漂わせる、繊細で綺麗な言葉は――。




wrong step on the stairs8



20191221UP.
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