rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第33章 wrong step on the stairs7
エレベーターで宿泊階に着き、ふと正面を見た瞬間に気付いたことがあった。
一部が鏡張りになっていたそこで目が合ったのは自分自身、その自分に表情があったことが、ナッシュはどうしても面白かった。
「……ハ…ッ」
一度鼻で笑うと、その後すぐ無表情に戻りながら部屋へと向かう。
どれほど今の状況を楽しみ、これから起こりうるかもしれない変化に期待を込めているか……。
それが、鏡のなかに映っていた彼の本音だった。
―――。
――。
「……どうしたよ…?まーたしおらしいじゃねえか……ン~?」
「……ッ」
咄嗟にシャワーの下に飛び込んでしまった。
そして気持ちよさげにそれを浴びるシルバーの背に迫り、腕をまわして立ち尽くす。
ただただ、顔を見られたくなかった。
自分がどういう表情をしているか分かっていれば、それを、シルバーが見て何かに気付かないわけがない。
ときにナッシュが彼のことを鈍い男と形容しようとも、名無しにとってはそこまで強く思えることではなかったのだ。
「……名無しー?」
「遅く……なって…その。……ごめ…」
「!……ァあ…?んなことかよ……別に遅せぇなんて思ってねえけどな…」
「だって…、……あの…居たし……」
「、ああ~……なんだ、押し倒されでもしたかぁ?」
「ッ……」
「……、おまえ…」