rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第32章 wrong step on the stairs6
「本気じゃねえか……まあ、だからこそ一度オレと寝てる事実が、どこまでも枷になっていくよな?……じゃあな、名無しチャン?」
名無しの下着を再び手にして、宙で眺めながら口角を上げる。
ナッシュはそれをベッドに投げ捨てると、鼻で笑ったのち、今度こそ漸くして部屋を出た。
彼が去ると、浴室に通じる洗面所の扉のなかでひとり息を殺して待っていた名無しは、呼吸を整え、そこで初めて自分の行動に動揺を見せた。
「っ……」
「……?!…名無し?」
もうこの場所まで来たのだから、シャワーを浴びない選択肢もきっとない。
扉に手を掛けると、名無しは視線を下げたままシルバーの居るそこへと入り、黙って彼の背後に迫って両手を伸ばした。
一方で振り向く余裕もないまましがみつかれたシルバーは、彼女の慌てた様子に愛しさを覚えるだけだった。
wrong step on the stairs6
20191030UP.