rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第32章 wrong step on the stairs6
「あーー、名無し……おまえはそれ飲んでから来いよ」
「、……え…?」
「シャワーに決まってんだろうが……一緒に浴びるぜ。あとちょっとしか一緒に居られねえんだよ、今日は」
「ッ……!ん…」
シルバーに隙を見せて甘えてしまっていたのは、きっとナッシュに酷いことをされたからだ。
エレベーターの中で起きたことも、その前の、シルバーの部屋でのことだってそう……。
全部自分が嫌なことを忘れたくて、たとえ乱暴でもセックスのことしか考えられなくしてくれる。
そんな行為がシルバーには出来たから、名無しは彼を甘んじて受け入れていた。
ただ、それも間違いであると気付かされるのは、自分にとってシルバーもまた諸悪の根源だったから。
二人同時にいることで我に返る……それでも、そこまでされなければ気付くこともできない愚かしい自分。
「……フッ。じゃあ……正午に下でな、シルバー。オレももう出る」
「おう」
コーヒーが不味いだなんて思うこともきっと烏滸がましいのだろう。
冷静になって、改めてその味を噛み締める。
シルバーには多分、美味そうに飲んでいる、としか見られていない。
起きぬけのそれを飲み干す手前で眉尻にキスをされ、当たり前のように誘われたのは浴室だった。
意味している行為に性懲りもなく赤くなった表情を、ナッシュは見逃さなかった。