rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第32章 wrong step on the stairs6
「久しぶりだな……昨夜は楽しめたかよ」
「ッ……」
シルバーが上肢を起こした名無しの傍に腰を下ろすと、一度上下にベッドが揺れた。
コーヒーのカップを両手で持つ仕草が可愛かったらしく、彼女が飲んでいる最中ということを気にも留めず、しっとりとした髪を何度も撫でる。
ラフな私服に着替えていたシルバーを真横に、コーヒーの香りに混ざるのは少し汗ばんだ匂い。
朝のシャワーを浴びる前に出かけていたのだろう……そんなことまで分かってしまうのがやるせなかった。
「おい、まだ寝てんのか……?なんならオレが起こしてやろうか?ハハッ」
「ハァ……朝から冗談キツいぜ…。ちゃーんとコーヒーも持って、起きてるよなァ?名無し」
客観的に見ても、ベッドは随分と広かった。
ゆえに同じように何人も座すことは簡単だ。
けれど流石にそこへ座るのは悪いと思ったのか、シルバーについてきたナッシュはソファに腰を下ろし、嘲笑と黒い視線で名無しを見ていた。
久しぶり、なんて……よくもそんなバカげた台詞を吐けたものである。
胸が窮屈になり、名無しは内心では冷や汗を掻きながら、ナッシュから目を逸らした。