rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第32章 wrong step on the stairs6
「うん……、その…あ……」
虫の息ほどの声音で言葉にした、礼の言葉。
いつシルバーとこの店のコーヒーを飲んだかなんて覚えていないし、自分がこれを嗜好しているということも口にした記憶はない。
が、知られているのならば嘘をつくのもいまは怖かった。
早朝から機嫌を損ねられては、きっとまたベッドが軋むことになるのだから。
名無しは素直に持ち帰られていたコーヒーのカップを受け取ると、飲み口に注されていたマドラーを抜き、そこへ口付けた。
恐る恐るひと口めを喉に通すと、シルバーとともに部屋に来ていた相手の口もようやく開き、名無しに改めてその存在をしらしめていた。
シルバーの隣に居た男が誰か……なんて、一人しかいなかった。