rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第30章 wrong step on the stairs4
「……」
ナッシュの言動を理解しようなんて思う方が馬鹿馬鹿しい。
気まぐれで、人のことを人とも思わない。
たとえ過程の中に愛撫があろうと、性処理用の「もの」としてしか、どうせ見られていないのだから。
エレベーターでのことを心の奥底にしまい込むと、名無しはスカートの中の湿った感触を一旦忘れ、シルバーの待つ部屋の前へと向かい、そこに到着した。
「……あ…」
自分の履いていた靴が、相変わらず床を鳴らすような類のそれでも、今は意味を成さないことに数秒経って気が付く。
到着して確認した部屋番号、扉の前でしんと静まり返った廊下に佇む名無しは、ロビーと違いカーペットの上を歩き、立っているということを失念していた。
「っ……」
携帯で呼び出すか、ノックをするか、ベルを鳴らすか。
どれでもよかったのだけれど、胸がどきどきとして思考が鈍る。
ドアが開けば最後、また互いが飽きるまで肌と肌がぶつかり合うのだ。
そして折りを見てシャワーを浴び、ベッドに寝そべる……朝まで多分、その繰り返し。
今までは褐色が一方的に攻め立ててばかりだった。
そうだというのに、その相手である自分も、もうまんざらでもなくなっている。
髪を耳にかけながら名無しは一度息を飲むと、結局ノックをすることでシルバーに自分の到着を知らせていた。