rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第30章 wrong step on the stairs4
「……っ」
去り際に吐かれた言葉を思い出しながら唇を拭う。
口付けられたそこは熱くも感じるし、冷たくも感じた。
感情に波が出来て、彼女の持つ、ナッシュに対する強い恨みや負のそれが名無しを不条理にいらつかせる。
こんな気持ちのままシルバーの待つ部屋のドアをノックするのは心許なかったけれど、早く会って、この苛立ちを鎮めて欲しいとも名無しは強く願っていた。
それに、冗談でも口にされたナッシュの言葉に、身体の奥がぞくぞくとしてしまったこともさっさと忘れてしまいたかった。
「――……最低だ…」
また口にするのは、自分の愚行を表現するに相応な言葉。
今まではシルバーにだって、そしてナッシュにだってぶつけてきた本音である。
名無しがそれを自身に投げかけている時は、自己嫌悪に負けて逃げたいと感じている場合だったし、体よく性的快楽で誤魔化したいとも思っていた。
そういうとき、シルバーの激しすぎるセックスの都合よさに、彼女の心身は気付いていた。