rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第30章 wrong step on the stairs4
それは多分、キスの所為。
ふと、顔の青白さが薄れてゆくのを感じる。
また赤みがかった本来の顔色が戻ったと思った名無しは、ナッシュとこんな状況に陥ったことが原因であろうということに胸を痛めていた。
最初は驚き、絶望して青褪めた。
けれど結局口吸われ、何処かしらで過敏に反応していたから、元に戻るを通り越して顔が熱くなっていたのだろう。
こんな理不尽なことはない……感じたくないというのに、ナッシュにはどうしても逆らえない。
変わらず思惑が掴めずに、名無しは唇を解放されるや否や、彼を睨み付けた。
「っ……、まさか…、ふッ!ん……」
「ハッ…心配するな……隣はあかの他人だ。オレ達が並んで部屋取るわけねえだろうが。それにオレはここで降りるしな……」
「…ッ……」
「……じゃあ、せいぜいシルバーと楽しめよ?……チュ」
「ん……ッ、――……」
きっと自分のそれは、説得力のない睨みつけなのだろう……嘲笑うナッシュの顔を見ていればわかる。
耳元で囁かれ、恨んでいる相手からのキスで吐息を出し、とろけ顔を晒してしまうような。
非力な自分に見合った行為ではなかった。
それでも、ただのか弱い表情を見せ続けるよりはいいと思ったのだ。
たとえそれがナッシュの自尊心を刺激するような行いだったとしても、そうしなければ悪いと思った。
「ッ…、………」
悪いと思った……では、誰に。
シルバーにそう思ったことの意味を、名無しは僅かに疼いていた下腹部に手を宛がいながら、ひとり静かに考えた――。