rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第30章 wrong step on the stairs4
「っ……」
「偶然だと思ったか?おまえのその絶望した面見たさに、ギリギリで来てやったんだよ」
「う……っ、…!や…」
「まあ……外から戻ってロビーを通ったところで、おまえが歩いて行くのが見えたのは偶然だけどな…行くんだろう?今から……シルバーが待ってるもんなァ?!」
「離し……!!ん…ッん……ンッ」
懸念していたことが起き目前が霞む。
無情にも閉められた扉はようやく動き始め、エレベーターは二人を乗せて上昇した。
名無しが背中に汗を垂らしていたのは、当然乗り合わせた相手がナッシュだったから。
加えて数秒間強いられた狭い密室、二人きりの空間というのも原因だ。
一定の高層階まで一度も停まることのないそれに、閉じ込められたような気持ちになるのも彼女にとっては自然な発想だった。
「ん……ッ」
下衆に歪んだ微笑混じり、再会を喜ぶナッシュに迫られる恐怖は計り知れなかった。
追いやられたすぐそばの壁、顔の横で手を付かれ、ホテルに着いたときには既に、彼の視界に捉えられていたことを明かされる。
近しいゆえに頬にあたるナッシュの息遣いが、シルバーの部屋で浴びた凌辱の一夜を思い出させる……。
たまらず下を向き、無意味であったとしても、少しでも壁際から逃れるべきだと本能が悟った。
そして名無しは抗おうとしたのだけれど、何もできないまま、ナッシュのキスで無抵抗を余儀なくされた。