rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第30章 wrong step on the stairs4
昔から、深く考えないようにすればするほど、気になって仕方なかった。
はじめは小さな糸の絡みつきが、いつしか解けないほどぐちゃぐちゃになって大きくなっている。
不安というのは拭いきらない限り、どうしても人の心に巣食うものだということを、名無しは今改めて痛感していた。
部屋で会うときだってそわそわしてしまうのだ。
それが、チームの面々が揃ってひとつのホテルに居るとなれば、心の淀みが拡がってゆくのは当然のこと。
「あ……」
「久々だな。シルバーの部屋で楽しんだ以来じゃねえか」
「ッ……なんで…」
閉まる直前、エレベーターホールに靴音が響き、それは自分の乗った機前で止んだ。
名無しは特に何も考えておらず、もう一度扉を開けようという所作をとることもなかった。
けれど扉は外からボタンを押され、その箱は名無しの他にゲストを乗せる為に開いた。
彼女の表情が瞬く間に曇る。
そのエレベーターに乗ってきたゲストというのがナッシュだったゆえに、チークのついた名無しの顔は生気を失い、蒼白さが頬の色付きを掻き消していた。