rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第30章 wrong step on the stairs4
一時間後。
いつもどおりシルバーの部屋に向かうつもりでいた名無しは、電話の中で出された指示に従い、とあるホテルへと到着していた。
よく聞く名のそれだ……彼の居るチームはストバスながら、相当有名であることが窺い知れる。
時々使うことがあるのだろう……どういう意図で、なんて考えるまでもない。
が、彼らの拠点からそこそこ離れていたあたりは、一応試合で結果を残しているゆえの、名目上ただの宿舎代わりとも言えよう。
その証拠に、ロビーには同日のゲームを観戦していたらしいコアなサポーターもちらほら、名無しの視界に入っていた。
「……」
部屋の番号を訊いた時は、なんとなく胸がどきどきした。
いけないことをしている……わけでもないが、そもそもの関係は劣悪なところから始まっている。
だからなんとなく胸騒ぎのようなものが混ざっていたのだろうか、ただ高鳴るだけではなかったことが、名無しを少し不安にさせた。
「えっと……」
エレベーターホールに行くと、数機あるそれは階層ごとに行き先が違っていた。
シルバーが告げた部屋は高層階……ホールの一番奥に専用のエレベーターがちょうど待機しており、名無しはそこへまっすぐ向かった。
別にフロアが上だからと言って、そこまで特別な部屋ではないだろう。
が、シルバーが電話で話していた、ベッドの大きさはなんとなく気になった。
わざわざ言ってくるあたり、彼の自室のそれより大きいのかもしれないと思うと、不安を孕んでいた胸が少し楽になった。
純粋に微笑ましいというか、あのシルバーにも可愛いところがあるのだなと思えたのだ。
「……?!」
上を示す矢印の付いたボタンを押し、扉が開いたエレベーターの中にゆっくりと入る。
ルームキーを挿さなければ稼働しないタイプのそれではなかったことにもホッとすると、名無しは静かに目的階のボタンに触れ、扉を閉めた。
「!」
「間に合ったな……」
「…っ……ッ……!!」