rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第30章 wrong step on the stairs4
「、ホテル……?」
『ああ……そこに来いよ。部屋は――』
自分にも都合はある。
無理をして向かうことは過去何度もあった。
けれど今は適当なペースが自然と組まれていた。
不思議なことに、都合のつかない夜に呼び出されることは一度もなく、名無しにはそれがとても有難かった。
部屋に行き、会って、それからすることといえば勿論言うまでもない。
ただ、シルバーは驚くほど落ち着いていた。
彼のことを怖いと感じる印象が根付く夜も皆無で、宛ら自分たちの関係を疑うほどだ。
事後に一人でシャワーを浴びながら、名無しはそこでようやく我に返り、何をしているのやらと自責の念を抱いていた。
それも毎回……文字通り重症である。
病んでいると思わされるのは、そんな念を抱いていても、シルバーの肌や熱が恋しくて身体が疼いていたからだろう。
『気を付けて来いよ?バカでけえベッドの上で待っててやるからよ…』
「ん……じゃあ…――」
自分を愚かしいと嘆くくらいなら、もういっそ毎日でもあの男の傍で眠りたい。
寂しい夜を一人で過ごしたくない。
通話の終わった携帯を握り締め、名無しは出かける準備を整えた状態で、自室のベッドに横になっていた。
数分後には部屋を出る。
今夜もまた、あの太ましい腕のなかへと自ら……。
胸がざわめき、そして躍るこの気持ちに名があっても、名無しはまたそれを自覚することを避けていた。
たとえ、それが何かというのを既に知っていても――。