rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第30章 wrong step on the stairs4
今までシルバーからの連絡は、いつだって心臓を抉られるような気持ちで応じていた。
着信のひとつやふたつ、拒むことなど簡単だった。
が、そんな愚行に出ればどんなリスクが舞い込むことか……。
一度中のデータが消されていたとはいえ、彼の携帯には、自身の弱みばかりが入っていたのだから。
「……はい…」
『!早えな……電話の前で正座でもしてたのかァ?』
「…そんなわけ…、……あの、今日は……」
『あ~……そのことだけどよ』
「?」
あれから何度か、名無しはシルバーの部屋へと通っていた。
呼び出されることに怯えながらでもなく、嫌々でもなく。
むしろ内心に沸く嬉しさが露骨にならないよう、注意を払いながら。
確かに、駅に着いたときや部屋までの道のり、玄関を通るときはまだ少し抵抗はあったかもしれない。
けれどそれはシルバーにではなく、ナッシュに対する警戒心からくるものだった。
もし遭ってしまったら、鉢合わせてしまったら……。
彼との間に起きた出来事を、シルバーに隠し通せる自信が名無しにはなかった。