rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第29章 wrong step on the stairs3
『じゃあ……行く…』
『ああ。……おい…名無し』
『?……!!んッ…ん……』
『ん……』
下がりきっていた血糖値も食事をすることで元に戻り、水分も沢山とった。
シルバーがキッチンにストックしていた多種に渡るペットボトルには、幸い名無しの好みの飲料水もちゃんとあった。
彼に対する威圧感も減ったのは良いこと……の筈だろう。
かわりに別の人物にそれが移った感はどうしても否めなかったけれど、それはまだ考えまいと、名無しはシルバーに小さく微笑んでみせた。
『は…ぁん……』
着替えの補助を一度だけして、壁にもたれながら彼女を見ていたシルバーは、その笑みに胸を打たれ、組んでいた両手には一瞬力みが生じていた。
満面のそれを自身に向けてくれる日は、きっとまだまだ先のことであろう。
むしろないかもしれないし、あるかもしれないと期待している己の危なさもなかなかきついものがある。
それでも、やはり見たいものが決まっており、それを自分で知っていることの意味は決して小さくなかった。