rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第29章 wrong step on the stairs3
―――。
――。
名無しが初めて自分から空腹を訴えたのは、友人の誕生日もとっくに終わった朝のことだった。
しばらくは忘れられなくなったであろうその日のこと……脳裏によぎりつつ、夜じゅう目が覚めなかったのは幸いも幸いだ。
いつのまにか帰って来ていたシルバーに最後抱かれ、そのまま眠れたのも恐らくは心労の所為だと思う。
あまり考えないようにベッドから起き上がると、シルバーも起床し、名無しはシャワーと食事を彼とともに済ませた。
『その……持って行った…の…?』
『あー?……!……アレか。――…ああ、全部な』
『?……――そう…、!ん……』
『……美味かったからまたよこせよ…食いてえ』
『!』
性欲が果てしないとはいえ、無限に続くわけもないのがまあ人間だ。
シルバーだって例外じゃない。
何もない朝があったっておかしくなかったし、彼もまだ若干の疲れが残っているのだろう。
起きた瞬間はベッドに寝戻されたけれど、軽いハグと頭へのキスだけで終わっていた。
こんな優しさに満ちた仕草をとられたのは恐らく初めてだったし、名無しが動揺したのも、典型とはいえ、する他になかった。