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rain of teardrop【黒バス/ジャバ】

第27章 wrong step on the stairs



「……ッ、あ……」


それは名無しがシャワーを浴びて数分、手に掬った湯で顔を洗い、首を左右に振った直後のことだった。

毛先だけ濡れた髪から滴る雫もまだ温かい。

寒気を感じることなど、本来なら皆無である。


「っ……」


湯を浴びたまま名無しがひやりとしたのは、その瞬間嫌な予感がしたからの他なかった。
同時に気のせいであれと強く願いもしていたのだけれど、その願いは脆く砕け、背中には気味の良くない汗が流れる。

身体を洗って、リフレッシュでも……そんな矢先に抱く嫌な気持ちは、心地よかったシャワーの音を耳障りに感じさせた。


遠く聞こえたのは、玄関の扉が勢いよく開閉された音。
人の気配を急激に近くに感じ、名無しは、それがシルバーのものでないことにすぐさま勘付いていた。




「は……、ぁ……」


「!――ハッ……ただいま?……名無し」


「……ッ」




その気配は何の迷いもなく、玄関からこの浴室までの数歩を辿ってきた。

シルバーでないことは分かった。

が、いっそ誰かも分からない方が幸せだったかもしれない。


漂う湯気のもと、薄い硝子の扉ごし……。
相手が誰だったのか分かってしまったから、名無しは上下の歯がぶつかり、上手く口を閉じられずにいた。


外はちょうど陽が完全に沈み、夜を迎えていた時間。

シルバーの部屋で彼を待つ名無しの元に来たのは、残忍冷酷な笑みを浮かべたナッシュだった。



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