rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第27章 wrong step on the stairs
「……ん…」
ゆっくりと動くまぶた。
長い睫毛の奥に光るのは、起きぬけ涙まじりのつぶらな瞳。
その眠気まなこでも、部屋に対する陽の差し方で、今がもう遅い時間だったことがよく分かる。
名無しはシルバーの部屋でひとり、ことのほかぐっすりと寝んでしまっていた。
―――。
――。
「……」
目を覚ました名無しは、いまだ身体の内側と下半身に濡れた感触を持っていた。
当然、シャワーを浴びたいという気持ちもそれなりに強く抱いている。
数時間眠っていたにもかかわらず、意外にも新着通知のなかった携帯で確認したのは現在の時刻。
友人は自分の所為で予定が狂ったのだ、きっと今頃は交際相手と合流でもしているのだろう。
シルバーが戻るにはまだ少し早い起床になってしまったけれど、常識的に考えれば、起きている方が自然な今はもう夕刻だった。
「んん……」
名無しはむくりと起き上がると、そこは一択、浴室へと向かった。
何かを考える前にまずはシャワーを……そういう思考にすぐに切り替わっていたのは、身も心もひとまずは満ち足りていたからかもしれない。
胸のもやもやより勝るのはどきどき、頬もまだ熱を持っているかのように感じ、夜を待ち遠しく思って仕方ないことが悔しかった。