rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第26章 nothing in return3
「うん……ほんとにごめん…、もう大丈夫。あーうん……大丈夫じゃ…ないけど……」
頭が痛い。
わざと喉から漏らすしゃがれた声色は、たとえ演技くさいと疑われても貫くしかなかった。
「ん……絶対埋め合わせするからね……。おめでと……」
こんな最低な日、自分の立場にあてられていたらどうしていただろうか。
体調を崩して夜じゅう寝込んだという体裁で、翌日は昼を過ぎてからようやく繋がった電話。
名無しが友人から開口一番ぶつけられたのは、怒りではなく心配の声だった。
どこまでも優しい、本当に良い性格をしていると思う……。
だからこそ名無しは友人に対し嘘なんてつきたくはなかったのだけれど、真実を伝える勇気も到底持つことはできなかった。
数ヶ月前、とあるストバスチームの面々によって車中に連れ込まれ、そこからは思い出したくもないことにまみれていたことも。
そのうちの一人にやけに固執され、弱みを握られながら、頻繁に酷い凌辱を受け続けていることも。
ぬかるみに足を滑らせて以降、やみつきになってしまい、いつしか自分から求めてしまうようになってしまったことも。
そして、大切な友人の誕生日を放り出して、その男の部屋で身体を委ねてしまった、今現在のことも……。
どの口が言えたものか――。
「……ッ…」
自分だけしかいなくなった大きなベッドの上で、名無しはひとり、携帯での通話を終えた。
仰向けに寝そべりながら天井に視線を送ったあと、目尻にはひと筋少量の涙が流れていた。