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rain of teardrop【黒バス/ジャバ】

第25章 nothing in return2



――。

―――。




「……あ…ぁ、ッ…」

「…、ん……はぁ…名無し……」

「ッ……も、う…そんな……だめ…」


口のなかが甘酸っぱい。
そう認識しながら重ねられる唇に情緒的なものを感じてしまうあたり、もう自分は終わっているとしか言いようがない。

どれくらい抱かれ、身体を制圧され、天井に浮かぶ快楽を掴むために腰を打ち付けられたことか。


「あ……また…っ――イッちゃ……、んぁ…――ッ!!」


シンクで迫られた時、服を脱がされ、名無しは首筋に噛み付かれた。
這う舌の感触にびくびくとなりながら横目に見えたのは、片腕で箱の中身を取り出すシルバーの手先指先。

建前としてはじゅうぶんだ、いいわけも揃っている。
友人に贈る為作ったその残り物と言えば済むところ、けれど残り物といえど、わざわざ箱に詰めて彼に渡すことに問題があるという根本を、名無しははき違えていた。


嫌いなら普通そんなことはしない。
ましてや、それがたとえば既製品であろうとも。
だからシルバーが驚くのは当然だった。

箱の中、ふたつとして同じ形のない小さなそれは、自然な赤らみが目立つチョコレートだった。
となりには焼菓子も詰めていたけれど、シルバーが偶々手にしたのが前者である。

名無しを押さえつけながら自身の口内にそれを放り込むと、シルバーはその美味さと、初めて感じる甘美な味に嬉々を見せた。

そして舌の上で蕩かして、液状にも似た状態になったそれを共有するかの如く、また口付ける。


思いもしなかった、想像などできるわけもなかった。
空想に耽るような甘いキスをシルバーと交わす自分など――。


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