rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第25章 nothing in return2
『待……っ』
『帰るぜっつったろ?聞こえてるよなァ?』
『……』
キスをされたとき、去りゆく電車の中に居た数人にはきっと見られていた。
恥ずかしいというよりも、まずはやはり、自分を追いかけてきたシルバーがどういう心境で此処に居るか、だ。
すべては会話のとおりなのだろう。
だとしても名無しは納得できないでいた。
下車して彼に抱き締められていた、自分の愚かさに……。
『……ああ…もう―――』
どうでもいい――。
頭ははっきりとしているし、睡魔の存在もそこまで近しいとは思わなかった。
むしろ眠いのはシルバーの方だ。
電車が完全にホームから去ると同時、名無しは張りつめていた糸がフッと切れ、その瞬間に思考することを一切やめた。
もう考えていられない、やっていられるか……。
彼女にしては珍しい、とても投げやりな状態にまで陥っていた。