rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第25章 nothing in return2
「は――…ァ……ッ」
鞄の中か、はたまた脱がされた服のポケットの中か。
しつこく振動音を出していた携帯のそれがいきなりぷつりと途切れてしまったのは、きっと電源が落ちてしまったからだろう。
もともと大した電量は残っていなかった。
「ッ……」
顔を摺り寄せたキッチンのシンク、そのひんやりとした心地よさには、火照った身体が自然とクールダウンさせられた。
今はおそらく深夜。
明確な時刻など、名無しには既に分からくなっていた。
―――。
――。
『んん……ッ、…っは…』
『……戻るぜ。さっさと来い』
『……――…』
選択を誤った、確実に。
電車を降りた直後に押し寄せた後悔が名無しを襲い、その訪れのタイミングにも心底恨めしく思う。
抱き締められることに慣れ、抱擁された瞬間に感じたのは、シルバーの服が濡れていたこと。
思えば確かに彼の部屋を出た時、珍しく外の空気は湿気ていたような気もした。
が、そんなことを考える間もなく、現実と向き合うために名無しは口を開いた。