rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第24章 nothing in return
「ッ……」
期待なんてしたくない。
ばかばかしい。
電車は待ってくれないけれど、これにさえ乗れば今日あったことは少しは忘れられるだろう……。
さっさと過去のものとして見切りをつけ、処理したい……。
そうだというのに――。
「ッ……――!!どう…して……」
「ハァ……ハァ…、チッ……とぼけやがって……!さっさとその足下ろせよ」
「、……っ」
名無しがその数秒間で悩みに悩み、頭のなかで描いたふたつの選択肢のうち選んだのは、友人と並んで笑顔を連ねることだった。
やはり祝ってあげたい。
自分にとって無二の親友に等しい友人を。
交際相手よりも自分を選んでくれた友人を。
いよいよ本当に電車が発車しようとした瞬間、名無しは右足を車両に乗せ、次に左足で地を蹴ろうとした。
それは当然、乗車に値する行為だ。
座りたい気分でもあったけれど、なんとなく扉横が空いていたから、今回はそこでもいいかと判断した。
名無しの左足が宙に浮いた瞬間は、彼女の細い腕、手首を後方から掴まれ、引っ張られたのと同時の出来事だった。
背後からの急な力に驚いて振り向くと、そこにはほんの少し、息を切らしたシルバーの姿があった。