rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第24章 nothing in return
「……ハァー…」
目を覚ましたシルバーは頭に手をやると、もう片方の手で枕元に置いていた自身の携帯を掴んだ。
時刻とメッセージの確認をして、無意味無意識に保存しているファイルを開けば、覗き見るのは名無しの写真と、動画を数秒。
撮りたてだったそれに口角を上げながら、日付がまだ変わっていないことも同時に知ると、彼は意外な表情を一瞬漏らした。
疲労なんて溜まるような体質でもない。
けれど何処かで疲れていたのだろうか、名無しを抱いた後すっかりと寝落ちていた自分に息を吐く。
直後感じたのは喉の渇きであり、潤す為、シルバーは身を起こすことを軽く決意した。
誰もいない自室とはいえ、一応はローブに手を伸ばし、それを羽織る。
立ち上がったあと、目覚めの悪さが柔和したのは、鼻をかすめた残り香が原因だった。
「、……あー…」
外出する前に何度かプッシュしたのだろう。
そこには名無しの匂い、と冠しても過言でなかった、シルバーの好いた彼女の香りがまだ寝室に漂っていた。
この香りを嗅ぐたびにシルバーは興奮していたし、身体を重ねている時も近くにいること、抱いていることを実感できた。
大事な用があるなら帰れと言ったのは自分だ。
けれど今更になって目も覚めて、結局帰したことを僅かながらに後悔する。
あの華奢で小さな抱き心地の好い、今となっては愛しくてたまらない名無しの身体を、今夜も抱き締めて眠りたいという気持ちがただただひたすらに募ってゆく……。
「んぁ……?……!」
そう思いながら向かったのは水を飲む為、暗いキッチン。
開けた冷蔵庫の明かりによって知らされた横目に入ったものにシルバーは驚きを隠せず、その反動で手にしたボトルを床へと落としていた。