rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第23章 sperm shower
いつぞや、テレビや映画で見たことのあるシーンを思い出す――。
「……ん、…――はぁ……」
画面の中の演者が恋人同士の設定だったからだろうか、それは淡い純白で覆われたような、清廉な印象だった。
そうだというのに、持っていた記憶と、今自分に降りかかっている現実との似ても似付かない乖離具合ときたらなかった。
耳元でうるさいドライヤーの音が本当に耳障りで、名無しは座り込んでいたベッドの上でひとり、シーツをぎゅっと握り締めていた。
「なんだ、ため息か?幸せが逃げちまうぜ」
「ッ……聞…」
正座を崩し、背中を丸めて楽な姿勢をとっていた名無しにとって、その体勢が実際は辛かったのには理由があった。
真後ろにはシルバーが居たからだ。
そのシルバーはというと、風呂上がりだった名無しの濡れ髪を乾かす為、彼女のそれを手中に包み込んでいる。
名無しがドライヤーを耳障りに感じた遠因もそこにあった。