rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第22章 unesiness
会うたびに堕落してゆく名無しを見ているのは実に楽しかった。
たまらない高揚感に満たされる支配欲。
字の如く捕らえ離さない、もうすっかり、己のものだと信じて止まない独占欲。
侵された彼女の心が自分に抗うその滑稽ささえ、或いは自涜の肴にだってできた。
「ハァーン……まったくよォ。……じゃあほらよ、……おねだりの時間だぜ」
「っ…、う……ッ!んぁ……あ…」
「名無しー?」
「――ッ、……おねがい……します、あっちで…、ぎゅっ……て。――して……?」
「ッ……」
いつからか、女の存在を匂わせれば露骨に機嫌を損ね、眉を顰める。
そんな仕草を零しつつも身体をとろとろにさせ、ときに悪魔のささやきをすれば、概ね、その厚い胸板に身を委ねていた。
それを繰り返してきた折、いまの名無しにとっていちばん嫌だったことは、シルバーが自分以外の他人を抱くことだ。
こんな男でも。
どうしようもない屑のような人格を持つ相手でも。
一度芽生えさせた悋気はもう、なかったことにはできなかった。
それを知られていたからこそ、たとえ歪んでいても、確かめ合った気持ちがあった。
破られるかもしれない約束のもと抱かれた日に感じた快楽を、名無しは忘れられなかったし、何度だって欲しいと渇望していた。
そしてそれは今でも同じだった。
「ふ……ン、ん…ッ」
連れられて、玄関で簡単に抱かれただけで自分の知る悦が得られれば苦労などしないだろう。
嘘はつけない。
名無しが真に欲しかったのは、シルバーの部屋、ベッドの中であの日のように愛でられることだった。