rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第22章 unesiness
「!うまい具合に連れと別れたじゃねえか……呼び止めて振り向いた瞬間の顔を見るのが楽しみだぜ……ハハ…」
歩きながら身振り手振り、楽しそうに友人と話をする名無しの姿を、最初は斜め正面からただの後ろ姿へ、そしてその背を目で追いかける。
なんてことのない話題で盛り上がっていたのだろう……笑い声さえ聞こえてきそうな、白い歯を見せて笑む彼女にシルバーはやんわりと頬を赤らめた。
ナッシュに発破をかけられなければあとを追えないほど見惚れていたのは、本気で愛情を抱いている他なかったからだろう。
そんな想いを持っていても、壊してゆくことでしか愛せない歪んだ関係だったし、それ以上のこともシルバーは望んでいなかった。
そして屈折した気持ちを自ら掻き回しつつ、彼は大きな歩幅で名無しの背に迫った――。
「ゴキゲンだな……オトモダチとデートだったのかよ」
「、――……!!」
「予定より早いが……遊ぼうぜ?名無し」
その後、出来すぎたほどの好機にその場で友人と別れ、それゆえに通りを一人で歩くことになった名無しは、まんまと後ろからシルバーに声をかけられ、瞬く間に表情を曇らせた。
勿論、一気に気分も暗転したのは言うまでもないこと……。
その現場を遠目で見ていたナッシュは、やはり彼女が、自分たちに心からの笑顔を今後も見せることはありえないだろうと悪逆めいて、ただ静かに薄ら笑っていた。