rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第22章 unesiness
「……」
「……おい。何してる……追わねえのかよ」
「っ……ああ…。いきなりすぎて驚いちまったぜ」
「何が吃驚だ。……けどまあ、こんな偶然もあるんだな…フッ」
通りが南北に続いているとすれば、北へ向かう者もいればその逆もいる。
それぞれの方角に向かって、道の中心で左右に進行方向が分かれていたのがこの場合も自然のことだった。
シルバーはゴミ箱を探していたために、普段はあまり歩かない道の端を今は通っていた。
態度の大きな人間が端を行くというのも箔のつかない話だ……ゆえに反対方向を行く通行人を気にする余地もなく、ナッシュが名無しを見つけたのも本当に偶然だった。
すれ違って、段々と距離が遠退きはした。
けれど二人が見た名無しは確実に本人であり、一瞬疑ったのは、彼女が満面の笑顔に溢れていたから。
友人と歩く姿のあまりに自然体な……。
ナッシュとシルバーには一度たりとも見せたことのない、屈託ひとつない明るいそれが、ただただ二人を驚かせていた。