rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第21章 the end of thought
「……初めてだったのかよ」
「っ……」
「ハッ……珍しいな。今どき開けた経験もねえのか……」
眉間に皺を寄せ痛みに耐える名無しを見ていると、そんな苦悶の表情だというのに、沸き上がる想いはまたも性欲のほかなかった。
シルバーが一種の達成感さえ抱いていたのは、自分の私物を彼女の身体を貫いてまで与え、身に着けさせたからというのも大きいだろう。
耳をおさえる以前に、手に持つピアスを無下に扱っているようにも見えなかった。
直感で行動を起こす性質のわりに、名無しの思惑をとらえることができたのはきっと、すぐ傍にいたから……。
名無しの表情が今は辛そうでも、そのなかには確かに、恍惚が混じっていた。
「……!!や……ンンッ」
「おい、あんま触んな……痛てぇのは今だけだ…。それよりほらよ……こっち向け名無し……チュ―――」
耳をおさえる名無しの手を掴み、あまりそこへ触れないよう指摘しながら、シルバーは彼女の唇を再び奪う。
うつ伏せたままだった名無しは両足をばたばたと揺らして抵抗し、数秒間交わされたキスからの解放を待った。
このとき悔しいなと思ったのは、舌を割り込まされて、それが陰湿に絡み合っている時だけ、耳の鈍痛を感じなかったこと。
自分で認めているようなものだった……夢中になっていたからか、必死に抗っていたからか。
どのみちシルバーに意識を傾けていたからこそ、頭の中から痛覚が消え、快感が再度広がったのだ。
「はぁ……」
「――まーた勃っちまったよ……おまえが悪いんだぜ?いやらしいカオばっかしやがって……」
「ッ…だめ……や、そんな…!あ……」
まるで聞き飽きたかのような同じ言葉を並べ、同じ台詞をばら撒かれる。
耳たぶに僅かに滲む血液は、見た目こそ痛々しく見えた。
けれどシルバーは既にもう、そこへ話題を運ぼうともしない。
キスで一気に目を覚まし、発熱する下半身を鎮めることしか、彼は考えていない様子だった。