rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第21章 the end of thought
「!……ッ…、ん」
「あーもういいっていいって……んー…。ハァ――やっぱ寝心地サイコーだな…おまえの隣はよ」
頬杖の構えを見せ、口元を緩ませて名無しを見下ろすいやらしい視線。
線の細く、明るい髪を太ましい黒指がそっと撫でる。
女性的な顔のラインをなぞる仕草もまた、事後を思わせる卑猥さを持っていた。
「ん……」
「…またすぐ寝落ちてやがったな……」
「、…う……」
「フッ…。けどまあ分からなくもねえよ……オレもまんまと落ちちまった。折角もうちょっとヤッてやろうと思ってたのによ。ハハッ」
「っ……」
「――かわいかったぜ……?すやすや眠って、気持ちよさそうで……おまえの寝顔はずっと見ててえな」
絆されてはいけない。
こんな意外性を突くような、甘い言葉に惑わされてはいけない。
性分を知っていれば、いま耳にした言葉はすべて、嘘に等しいのだから。
名無しは馬鹿正直に寝そべり続け、ふと目を覚ましたシルバーと話している状態に甘んじている自分を嘆かわしく思った。
が、早々に起き上がり、シャワーを浴びてこの部屋から出るべきなのだと頭で分かっていても、身体がその気持ちに追いついてはくれなかった。
まず、それだけ疲れていたのだ。
全身に漂う疲労感が、あわよくばと再び眠気を誘っている。
ここで寝てしまえば、きっと今夜はもう帰れない……。
またシルバーの腕の中で溺れるに違いないだろう。