rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第21章 the end of thought
「………」
拾い上げたそれが、その空になっていたピアスホールの中に通されていたものだと分かるや否や、名無しはふいに思ったことがひとつあった。
それは自分が手を伸ばし、シルバーの耳にピアスを付け直してやることだった。
きっと簡単なことだ……不可能でもなければ、おそらくはすんなりと熟せる所作に違いないだろう。
とはいえ今の彼女には、現実には行動に移す度胸も勇気もなかったのだけれど。
何より、装飾品のひとつが外れて落ちてしまうほど、自分たちがしていた行為の激しさをそこで改めて思い知っていた。
「ッ……」
おぼろげに、今度はシルバーの唇に通るピアスを見つめ、また手元のそれにも視線を合わせる。
それらは、彼を連想させるには十分すぎるアイテムといっても過言ではないだろう。
意外にも寝息ひとつ立てずに眠るシルバーの傍で、自分は何を想い、何をしようとしているのか。
嫌悪も、或いはそれ以外も、たとえば口に出来ない心の中に抱いた感情を、この小さな耳飾りにもしも吹き込められたら――。
「……!!ひゃ…」