第20章 in the maze

「む……ん…！はぁ……」

「ンー……」


シルバーが名無しの口淫を好むように、名無しもまたシルバーから降らされる愛撫に夢見心地を覚え感じている。
陰核を舐め回されることを望んでいた彼女にとって、それを続けられるということは幸せ以外の何ものでもなかった。

そして同時に恐れていたのは、いつまたその舌が離れてしまうかということ。

散々焦らされていたのだから、気まぐれに行為を止められる可能性はやはり高かった。


「……ッ」


満たされたい、昇りつめたい。
その部位で達けないのなら、他の場所でも構わないから……。

いつのまにかシルバーに対して億劫にならず、どころか、高望みさえしてしまうほど、名無しは欲に忠実になっていた。

せめてと自ら腰をひくつかせ、芽に撒かれていた刺激に悦を上乗せさせ、絶頂を感じられるか試みる。
勿論、シルバーを咥え続けたまま……。

陰核を愛でる彼の舌がたまらなく気持ちよくて、その瞬間を目前に、名無しは自ら快感を引き寄せようとした。


が――。




「ふ……ぅ、……んぁ…、？！――ッ！！」

「―――……フッ…はは……、あーあー…残念だったな！」

「、…ッ……」


あと少し。

舌先で幾度か擦られれば果てられる……。

そんなタイミングで捩じらせた腰を掴まれて、名無しはシルバーの舌の感触を見失い、同時に、絶頂の兆しもまんまと遠退かされた。

彼女の思惑を読んでいたシルバーによって寸止めを喰らわされ、かわりに名無しが与えられていたのは、望んだものとまるでかけ離れていた絶望感だけだった。