rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第20章 in the maze
「ン…、チュ――………おい…」
「ちゅく……は、ぁ…ン……――…もっと……、ちゃんと…――ッ」
「……」
「、ッ…――知ってる、でしょ……好きな…とこ……、全部ッ……!」
「………」
もう、首輪でもなんでも付けてくれて構わない。
躾がなっていないのなら、好きに飼育し直してくれていい。
「――…、…おねがいだから焦らさないで……っ、ほんとに……」
「!…ッ……」
名無しにとっては実際口にした言葉じゃなくとも、相応の覚悟をもって紡いだそれは短い本音だった。
これならシルバーには通じるだろうか。
気持ちを汲んでくれるだろうか。
そんなことはありえないかもしれないという不安を抱きつつも、名無しにとってはもう、彼に回した腕を自ら解くことは無理に等しかった。
「名無し………」
きっと、さっさと自分から跨って交われば、抱き合って意思を確かめ合ってしまえば、煩わしさも焦れも解消されただろう。
そんな考えさえ持てないまま、名無しはそれを望むことはなかった。
彼女がいま本気で欲しかったのは、シルバーに抱かれるまえに、前戯で愛されることだった――。