rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第20章 in the maze
欲しいと思う部位に的確な愛撫が落とし込まれないというのは、こんなにも苦痛だっただろうか。
恥じらいは残しつつも、シルバーへの想いに麻痺を起こしていたらしい名無しの発言は、なかなか再び彼を驚かせる。
自分が興奮しながらも今まともでいられたのは、嫌々でも、同日既にセックスに及んでいたからだろう。
けれど名無しは違う。
今日初めて触れられ、焦らされていれば、ここまで乱れてしまうのもまあ頷けると言えばそうなのだけれど……。
「は……おまえ、どっかで変な薬でも飲んできたのか?んな大胆なコト言っちまって…」
「っ…ん…あ……」
「ハー…そうかよ……、いっぱいなあ…。どうするかな……ハハッ、……!」
「ッ……や、……お願…」
懇願する名無しが、どうしようもなく可愛く見えて仕方ない。
むしろそれ以上の……たとえば可愛いを超える言葉が欲しかったほどに。
真っ白な肌を小刻みに震わせて、ねっとりとした愛撫に駆られ息を急く彼女に続けるのは、相変わらず指先での触れと軽い口付けのみ。
濃密なキスは気まぐれだったゆえか、既にお預けを喰らわせていた。
正直、舐めることなど簡単だ。
顔を近付け、舌を出せばいいだけだったのだから。
それを垂涎の如く待ち焦がれる名無しの切なげな瞳たるや……シルバーにとって、たまらないものがあると思えるのも当然だろう。
「はぁー……しょうがねえな…そのエロいカオに免じてやってやるよ……、声出せよ?」
「…!!んぁ……ッ」
シルバーは名無しを焦らしつつも、「求められる」という行為そのものには愉悦を覚えていた。
自分が望まれていることに対し沸き起こる、何かの感情が一気に実り、それがまるで身体のなかで開花するような……。
その種子を胸元に感じ、気が付けば名無しの願いにあっさりと応じているあたりもまた、なかなか彼らしかった。