rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第20章 in the maze
ベッドのそば、床に落とされるワンピース。
その実に女性らしいシルエットの服は、シルバーの部屋に無造作に置かれるには、到底不釣り合いだった。
隣には彼の羽織っていたローブが同じ機に脱ぎ捨てられ、シルバーは名無しの身の上で裸をさらす。
「っ…んぁ…」
名無しにとって、先刻の告白は相当に勇気を要していた。
彼女の抱えた心労を気休め程度でも癒すべく髪を撫で、仰向けになったことで目にした、下着の柄に触れる。
シルバーなりにまた、場を和ませようとしていた。
当然、名無しからすれば和むどころか……の話ではあったのだけれど。
なにが感じない、だ……それならわざわざ複数人とセックスなどしないだろう。
このとき名無しは、また並べられたシルバーの嘘と、その場凌ぎのいいわけにも妬いていた。
妬く必要などなかったというのに…。
なぜならシルバーは、名無しと会えない寂しさを埋めるため、仕方なく他の女を抱いていたのだから。
たとえ平気で抱けても、彼が心を奪われ、本気で惚れているのは名無しだけなのだ。
そんなシルバーの想いを知る日が来れば、名無しもまた、心を傷めることもなかっただろう。
醜い嫉妬心など持つことのない清廉とした自分に、或いは…――。