rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第20章 in the maze
「いや……あ…」
この寝具で、ほんの少し前までは違う女たちを抱いていた。
詳細をくわえればナッシュだって居た。
そんな行為に走る男が、もうおまえしか相手にしないなどと平気で嘘を並べ、まだ濡れていた同じ寝具で自分を組み敷いている――。
「う……、ゃ……やめて…」
弱みを握られているから身体を委ねてきた。
今日もそのつもりで、さっさと終わらせて帰りたかった。
そうできなくなった大きな原因がこのベッドだ。
光景を一度思い出してしまった名無しにとって、シルバーにただ触れられることすら、いまは屈辱に感じていた。
――そうだというのに、どうしたって身体が彼を欲している……。
拒んで、求めて、焦らされて、身体が叫んで、嫌がって、望んで、逃げて、心が願って、訴える。
気を抜けば、一番優先したかった想いが前のめりになって、苦しかった胸や喉元に押し寄せた。
それが怖くて無心になるも、なったらなったで同じ症状がまた、名無しを無情に襲う――。