rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第2章 rain of teardrop-2
「ん・・・っ」
寝かされていたシートが一瞬グッと上下に揺らぐ。
男が怠そうに腰を下ろしていたのが原因だ。
そして彼が続けざまに口にしたのは、少しトーンの上がった、含みを持たせた言葉の数々だった。
「まあ・・・ムシャクシャしてんなら出し直しゃあいいだけなんだが・・・おいシルバー。そういうおまえはご機嫌じゃねえか」
「ハハ・・・ッ!ゴキゲンにもなるぜ・・・、ほーらご挨拶だ・・名無し?」
「フッ・・・、なるほどな」
車体の位置で言えば殆ど後方・・・フラットシートは後部座席寄りのそこへ寝かされていた名無しにとって、元々出入り口を見ることは簡単ではなかった。
スモークのかかった真っ暗な窓にぼんやりと視線を向けながら、再びシルバーと男のやりとりに段々と恐怖を覚える。
軽く腰を下ろすだけだった男がシルバーに触発されシートの上に乗りきると、革のぎちぎちと唸る音が自分に近付き、名無しは狼狽えた。
直後伸ばされた、目の前に見えた浅黒い手はシルバーのそれ。
顎を掴まれて、いとも簡単に顔を彼らに向けるよう強要されると、そのとき目元の霞んだ遠因になっていた、彼女の乱れた前髪をそっと掃ったのは、後から来たもう一人の男だった。