rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第20章 in the maze
「……ハーン?赤っけぇカオだな……なんでンな面してんだよ……んー?」
「ッ――」
我ながら勇めたつもり、だった。
たとえ無力であると、一瞬にして思い知らされたとしても。
名無しは唇を震わせ、それでも真剣に、いつもの取引として事を訴えかけた。
そのときのシルバーは目を丸くしていたものの、それは単なる名無しの態度に対する、好奇心からくるリアクションである。
自分がよく、ナッシュやチームメイトから口々に言われていたゆえか、この状況を理解するのは簡単だったのだ。
名無しは感情的になっている……そしてそうなる理由も、面白いくらい分かっている。
仮定した瞬間、彼女が部屋を出て行ったことと結びつけると、ほんの少し前に着信があったナッシュの話だって、自ずと信じられた。
そこに、シルバーが笑いを堪える必要も、理由もありはしない。
彼の纏うバスローブのなかで、なみなみ発散した筈の欲が、沸々とよみがえってゆく――。
「…離……!や…ッ」
「もっとよく見せろや……風邪だったら大変だろう?横になんねえとなァ」
「ッ……そん…、思ってないくせに…!嫌っ…」
「ハッ……誰もいねえよ、もう……オレとおまえの二人きりだ。帰すのにかなり急がせたからな…ぶつぶつ文句がうるさかったぜ」
「っ……」
「、……んな不安そうな面するなよ。いねえよ…マジで。別におまえが望むなら、もう誰も此処に通さねえ約束くらいオレは守るぜ?それとも…呼び戻して乱交でもするか?」
「や――ッ……」