rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第20章 in the maze
シルバーはベッドで女を抱いていたときに見せた驚きなど余所に、そんなことはまるでなかったかのような振舞いで名無しに接する。
彼にとっての驚愕とはなんなのだろう……そんな単語を口にされたところで、意味などなさないくせに。
名無しに触れ、廊下から寝室へ向かおうとした足取りを止めたのは、彼女が自分の後ろを付いてこなかったからだ。
けれどシルバーはそこで怒るわけでもなく、場を和ませるつもりだったのか、面白おかしく件について触れ名無しを茶化した。
当然、茶化された名無しはたまったものじゃなかったが……。
「ッ…」
無神経な男だ――。
やはり彼にとっては、自分など大勢いる女のなかの一人にすぎないのだろう……。
よく言って上から数えられる順位に運良く居り、悪く言えば、きっと脅しの種をもとにいつでも好きに犯れる、とても好都合な女……。
それなら、早く今日のノルマを終えて帰りたいと思った。
だから名無しは意地になり、ふと顔を上げると、シルバーを睨み付けた。
その瞳は儚く脆いものだったけれど、口にした言葉は、今の彼女にとってはなかなか勇んだものだった。
「寝るなら…早く……、…それで今日はもう帰…」
「おい…、……!」
「っ……!見…」