rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第20章 in the maze
「……」
「~……吃驚したぜ…、呼んだ覚えのねえおまえがそこに突っ立ってたんだからな…。まあなんでそうなったかは、さっき分かったけどよ」
「…、っ……」
「……人の携帯で好きに打ちやがって……ハァ…まーたロックかけなおさねえとな…この分だと、最近撮ったおまえの動画も向こうに転送されちまってるかもな。ハハッ」
「っ……」
「……、おい…名無し?」
そこは玄関と寝室のちょうど真ん中。
室内だと言うのに、廊下はなんだか肌寒く感じ、生活感の漂わない空間であることが改めてよくわかった。
まあ、移動するだけのためのスペースであることに変わりはないのだ…名無しがおかしな解釈をしているわけでもないだろう。
特筆するなら隅に買い溜められていた、スポーツドリンクやミネラルウォーターのボトルが束になって置かれていたくらいだ。
一緒にプロテインの袋もあったことが毎回少し気になったけれど、練習を一切しないと噂で聞いていた割には、それなりに良いものを口にしているのだなと思った。
「……く…」
「あ?」
そうして今の名無しは、そこを進むも戻るも出来ない状態にいる。
進みたくもなかったし、だからと言って、ただでは出られないという直感がはたらく。
「ッ……早く…」
「あ…?」