rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第20章 in the maze
「!!……な…」
「思ったより早かったな。待ってて正解だったぜ……フッ」
名無しは脳裏で巡らせた、様々な記憶を早く忘れるべくどうにかしなければと考える。
それが自然な流れの筈である……醜悪すぎるあの場面など、頭のなかから抹消すべきものなのだ。
帰り道、もう既にシルバーに抱かれるつもりでいた名無しの身体は、あんな光景を見た後でも、悔しいかな悶々としていた。
それは彼女自身、今一番許せなかったことだった。
何故燻って、身体の一部が火照って、それが冷めてくれなかったのか……。
その理由が分かれば、頭のなかは未だ混沌とすることもなかっただろう。
「……どうして…」
ただ、自分で解きたかったそれを否が応でも解らされる状況がすぐ訪れたことは、名無しにとって幸か不幸か。
それを決めるのも、本人の気持ち次第だった。
「ベッドにはまだ三人居たのか?」
「ッ……、…」
「ハハ…ッ、まぁそれでも、オレが相手したのは一人だけどな」
「……なんで…」
「流石にもう分かるだろう…?今日来るように、シルバーの携帯からおまえに連絡したのが誰なのか」
「!」
気が動転していた名無しにとっては、今どんなコンディションを患っていようとも、やるべきことは殆ど決まっていた。
帰ること一択として絞るほかなかった。
けれど同じ帰り道、駅の方へと向かう途中で、聞き覚えの大いにある声音を耳に挟み、立ち止まる。
数分前の既視感……名無しに声をかけていたのはナッシュだった。