rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第20章 in the maze
「……見ものだな…」
ナッシュは名無しとは逆で、シルバーの部屋から出てきていたようだった。
訊くまでもなくそれが分かったのは、出会った場所が場所だったから。
チームだって同じ、室内でどういう遊びに明け暮れているかなど考えたくもなかったけれど、純粋に仲が良いのだろう。
名無しに出くわしたナッシュは相変わらず薄気味悪い笑みを浮かべ、そっと彼女に歩み寄る仕草も、やけに陰湿に思えた。
「自分がどう想ってるか…嫌でも突き付けられる瞬間だろうよ…フッ――」
憎まれ口もひとしおに、珍しく何かを話したそうにしていたナッシュを突き放して、名無しは先を急ぐ。
どうせ大したことじゃなかっただろうし、まともに相手をしていたら襲われかねないとすら思う。
用があるのは自分を呼び出した、あくまでシルバーに対してだ。
結局ナッシュを撒きシルバーの部屋へと急いた名無しは、彼が口漏らした言葉を耳にすることはなかった。
同時に髪を掻き上げたその首筋、トライバルのなかに混ざる、複数の赤い痕に気付くことも――。