第19章 Villain or Ghost？

「……や…！当た…っ」

「フッ……勃ってきちまったなぁ…、いつまでもそんなくよくよしてるからだぜ？」

「ッ……だめ、…まだ…そんな気……」

「あーーそうかよ…んじゃあテメェでシャワー浴びてさっさと帰れや。一人で浴びれるもんならな」

「……っ…」




限られた空間でも身を離すことは簡単だった。
けれどシルバーは名無しの背後から退かぬまま、彼女の臀部に固まったものをじっとりと宛がう。
欲望のかたまり、熱を持つそれを感じ、名無しは半歩進んで一度は密着を解こうと試みた。
もちろん、そんなことは許されるわけもないのだが…。

腕を回されて顎を掴まれると、耳元にはシルバーの声音、名無しは臍の奥がきゅんとなったことをひとり実感した。


「ッ…」

「あーん？ほーら名無し……」


浴室は明るかったし、気味の悪さだって今まで感じたことはなかった。
それでも映画の所為で、この箱の中の何もかもが怖くてしょうがない。

今シルバーに寝室に戻られるということは、名無しにとって、自分の立場がただの窮鼠同然になることを意味していた。

滅入ってその気になれなくても、復活してしまった彼を受け入れないことには、当然安寧は皆無だろう。


「……ん…、チュ…」

「！……」


だからやむなく、仕方なく。

もう何度も見られていた裸を、振り返って正面を向け、自らさらけ出す。
つま先で立って密着をより深く、伸ばした両腕は太い首筋へ……。

近付けあった顔は、シルバーの唇に名無しはそっと触れた。
そしてその後、すぐに激しいキスへと昇華させた。