rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第19章 Villain or Ghost?
―――。
――。
『っ……何、見て…』
『ぁア?遅かったじゃねえか。いいからおまえもこっち来て座れや…、ベッドに入るのはその後だ』
『……ッ…』
嫌な予感はしていた。
呼び出されて玄関を入ったとき、シルバーの部屋の奥から、恐らくはテレビの音が聞こえた。
自分と居る時は、普段はあまり付けない傾向にあったそれ。
名無しが驚いたのは、設備が意外と整っていたことと、それゆえにどすどすと響いていた音の臨場感だった。
初めてに等しい、玄関先からも聞こえていたのは悲鳴の類。
まるで自分が叫んでいるようにも感じ、当然名無しはいい気分になれるわけもなかった。
寝室に入ると、シルバーはシャワーから出たばかりのようで、炭酸水片手にローブ姿、足を大きく開いてソファで寛いでいた。
その姿と石鹸の匂いを感じ取り、すぐ抱かれるのだなと名無しが思った矢先、彼が口にしたのは隣に座れという酷な一言だった。
『―――ッ…』
肩を抱かれて、凭れるように強要される。
恐る恐る見た画面に映っていたのは、名無しにとって視線を逸らしたいものばかりだった。
なんとなく気付いてはいたものの、自分の到着は、シルバーが好きだと云う映画の鑑賞時と機が重なっていた。
勿論、彼が陳腐で恋愛脳にまみれたそれを好むわけもない。
画面いっぱいに広がっていたのは、虚像に満ちた、血飛沫の飛び交う恐怖心を煽るジャンルのものだ。
『う……っ』
そして名無しは、この手のものが死ぬほど嫌いだった。