rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第18章 teardrop after Ⅶ
名無しは唇を離され、自分を見下ろしていたシルバーの視線が床に移ったことに対し、少し悋気を覚えた。
こんなことはあっていいわけもない・・・筈なのに、胸にもやもやとした気持ちが孕んだ事実をもみ消すことが出来ず、ひとり眉を顰めた。
電話を鳴らした相手は一体誰か・・・そもそも着信か、メールか、ただの何かの通知音か。
どのみち、事後と呼ぶべき現状に携帯が存在感を露わにしたことは、我に返る分には幸いではあった。
けれどそこで現実に呼び戻された気がして、不幸と呼ぶことにも何ら違和感はなかった。
撫でられていた頭からも大きな手は離れ、シルバーのそれが床に伸びた瞬間、名無しはいよいよ自身の血迷いぶりを大きく自覚する。
「――・・・出るなって?おい・・・」
「っ・・・」
携帯を拾おうとしたシルバーの手に手を伸ばし、揚句それを奪い取るなど――。
こんな大胆な・・・自分がしていたことに、名無し本人も驚いて当然だった。
そしてシルバーもまた驚かずにはいられず、彼女の手から携帯を奪い返すことを、一瞬失念していた。