rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第18章 teardrop after Ⅶ
シルバーが店に入り、一目散に向かったのは件の奥の部屋だった。
勿論、名無しを連れて。
当然誰かが既に入室を終えた後かもしれないという懸念は、彼の頭にあるわけもなかった。
一度退店して再び戻ってきた時間を思えばその確率は高くなかったし、もしも譲った経緯があったゆえに先客が居たとしても、関係ないの一言で、またその場を制すことだろう。
勢い強かに個室の扉を開くと、そこには幸い誰もいなかった。
「・・ッ・・・」
「・・・・・・」
「ッ・・・あ、の・・」
名無しは、初めて連れられた店の退廃的な雰囲気と、ベースの低音が耳にどしどしと響くうるさい音楽に萎縮していた。
自分とはあまり縁のない場所だ。
治安が良くないを実によく表した、やんちゃが集うようなそれの典型とでも言うべきか。
入口から個室までも一瞬、シルバーの足取りに合わせることにも必死だった。
「・・・っ」
そのときの店内には、ナッシュと、隣に居た女の気配は感じられなかった。
居ても不安だけれど、そもそも不安もなにもないという突っ込みを自らに課す。
自分から、シルバーの元へと行ったのだから。