rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第16章 teardrop afterⅤ
この数日間、ナッシュはシルバーが飢えており、癇癪を起すかの如く日々苛立ってゆく様を一番間近で見ていた。
試合の前も、勝利した直後も。
果ては夜に用意されたご褒美の時間さえも。
不自由なく好きなように過ごしていた筈なのに、関係を持った女から聞く愚痴が絶えることはなかった。
その内容から、原因が分かりきっていただけにどうしたものかと考えるのも阿呆らしかったのだけれど、
たとえ歪んだ愛情でも、シルバーが悩む様子を、ナッシュはどうにも放ってはおけなかった。
たまたま拾って、奪って、やりたい放題に嬲ってきた名無しへの入れ込み様・・・その尋常の無さには敬意すら覚えるほどだ。
もっとも、我に返ってその敬意を捨て、ただの冗談として置き換えるのもまた、ナッシュなりのシルバーへの労い方だった。
「・・・・」
それでも、偶然名無しと出会った以上、彼にサプライズするのも悪くないと思った。
そして何より、自分たちを恐れていた筈の名無しに、心変わりの兆しが見えたこともまた大きかった。
シルバーによって躾けられ続けた結果がこれなのだろうか・・・ナッシュの目には、彼女もじゅうぶん、狂い始めているように思えて仕方がなかった。