rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第16章 teardrop afterⅤ
「な・・・ッ」
ナッシュの隣に居た女は悪態をつくわけもなく、ただ黙ってこの場の進展を待っている様子だった。
彼が自分の他に関係を持った者が多いことをよく理解しているのだろう。
名無しのことも一度ちらっと見ただけで、あとはそっぽを向いていた。
ただ、さっさと切り上げて欲しそうにも見えたのは、この二人が「そういう理由」で一緒に居たからというのも、今更な話だ・・・。
「何言って・・・」
「ハハ・・・ッ、何言って、だァ?そのままの意味だろうが」
「そんなバカなこと・・・」
「マジで慣らされたもんだな・・・オレがおまえにしたことを思えば、普通なら逃げ出すぜ?何平気なツラして話してやがる」
「っ・・・」
「おまえがウズウズしてるんだ・・・あいつはもっとなんだろうよ」
ナッシュは逃げ出すかのようにその場を離れかけた名無しに少し苛立ち、確実に立ち止まらせる為のとどめを直球で投げた。
まあその思惑はど真ん中を射ており、頭のなかで浮かべた絵図が現実のものとなっていたことが、彼の表情に笑みを滲ませる。
自分にとっては二度ほど顔をあわせた程度の、大勢居る女の中のひとりにすぎなかった。
が、悪くない女だ・・・そして、チームメイトが本気になっている存在なのだ、餌を撒いても退屈はしないだろうと直感が働いた。
立ち止まった名無しの表情には焦燥と頬の紅潮が織り交ざり、ナッシュはその様を見ていることが愉快でたまらなかった。